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『細胞都市』 | 山本理顕
Cell‐City | Yamamoto Riken
掲載『10+1』 No.05 (住居の現在形, 1996年05月10日発行) pp.88-88

家族というのは寂しいものだと思った。家族というあまりに小さな関係が、それでもその中に関係というようなものができ上がってしまっていることが、そしてその関係が内側だけで閉じてしまっていることが、その関係が外に対して何の手がかりも持っていないということが、そういうことが寂しいのだと思う。要するに、今私たちが持っている家族という単位は、社会的な単位としてはあまりに小さ過ぎるようなのである。ひとつの単位としての役割を既に果たせないほどに小さいのだと思う。
それでも、この小さな単位にあらゆる負担がかかるように、今の社会のシステムはできているように思う。今の社会のシステムというのは、家族という最小単位が自明であるという前提ででき上がっている。そして、この最小単位にあらゆる負担がかかるように、つまり、社会の側のシステムを補強するように、さらに言えばもしシステムに不備があったとしたら、この不備をこの最小単位のところで調整するようにできているのである。
だから、家族が社会の最小単位としての役割を果たせなくなっているのだとしたら、それは、社会の側のシステムの不備を調整することがもはやできないということなのである(INAX刊より)。
(やまもと  りけん/建築家)

展覧会出品作品のためのドローイング

展覧会出品作品のためのドローイング


《 保田窪第一団地》1991

《 保田窪第一団地》1991

《コート・ア・コート》1994

《コート・ア・コート》1994

*この原稿は加筆訂正を施し、『細胞都市』として単行本化されています。

>山本理顕(ヤマモト・リケン)

1945年生
山本理顕設計工場 代表。横浜国立大学大学院教授/建築家。

>『10+1』 No.05

特集=住居の現在形

>細胞都市

1993年