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Google EarthからMitakaへ─視線の拡張と「地球観」 | 安藤幸央
From Google Earth to Mitaka: The Image of the Earth and the Expansion of the Glance | Ando Yukio
掲載『10+1』 No.42 (グラウンディング──地図を描く身体) pp.84-85

Google Map / Earthが人々にもたらしたインパクトと位置情報に対する意識改革

検索エンジンで知られるGoogleが提供するロケーションベースのツールとしてGoogle Map、Google Earth★一が注目を浴びている。地図に関わる仕事をしている人々、ロケーションベースの仕事に関わる人々の間が顔を合わせるたび、Google Map / Earthが話題に上らない機会はない。Googleがもたらした既存業界への脅威とともに、様々なチャンスが突然凄い勢いで広がってきたことが実感できるからだ。
Google Map / Earthの登場以前と登場以後とでは地図というものへの意識が大きく変化した。
その変化は、地図を生業とする人々はもとより、普段普通にインターネットや携帯電話を使っている普通の人々の意識をも包括している。位置情報や衛星写真が突然身近な、普段の視線の先にある事柄としてかつ気軽に捉えることができるようになったのだ。

1──Google Mapで見た東京新宿副都心周辺

1──Google Mapで見た東京新宿副都心周辺

●Google Map〈http://maps.google.com/〉(現在はGoogleローカルとサービス統合されている)
●Google Earth〈http://earth.google.com/〉(Windows版、MacOS X版)
Google Mapが人々の視線を惹き付けるのには理由がある。それは動きの心地よさ、快適さ、素早さ、無駄な情報が削ぎ落とされた極限までのシンプルさを保った立ち振る舞いである。Ajax(Asynchronous JavaScript and XML)という技術アプローチがベースになっている。
一方Google Earthが視線を惹きつけるのにも理由がある。それは、その操作の心地よさである。
ドライヴ感・加速度が感じられる浮遊感と、画像解像度のマジックである。膨大な量の衛星写真データはサーバ必要に応じて適切に少しずつデータ転送されてくる。民間用の衛星写真の解像度には限界があるが、車の車種が分かるくらいの衛星写真が投入されている地域もある。
Google Earthで使われている衛星写真は、どうやら担当者が気に入った衛星写真が投入されている様子であり、遊び心のある場所を偶然発見することもあるのが醍醐味のひとつでもある。興味のある人はGoogle SightSeeing〈http://www.googlesightsee ing.com/〉やGoogle Maps Mania〈http://googlemaps mania.blogspot.com/〉をチェックしてみて欲しい。その楽しさの虜になるはずだ。
地図を鳥瞰で見ることによる新たな価値、普段街を歩いているだけでは捉えることのできない空間把握の体験をもたらすであろう。

2──Google Earthで見た東京品川湾周辺

2──Google Earthで見た東京品川湾周辺

3──Google Earthで見た空港風景 手書き風CGツールSketchUpを利用。Google Earthの固有情報を記述したKMLファイルから起動。©Google, The GeoInformation Group

3──Google Earthで見た空港風景
手書き風CGツールSketchUpを利用。Google Earthの固有情報を記述したKMLファイルから起動。©Google, The GeoInformation Group

4──Google Mapで見た東京国分寺から三鷹周辺 ツールOnlineScreenを利用 ©Google, The GeoInformation Group

4──Google Mapで見た東京国分寺から三鷹周辺 ツールOnlineScreenを利用 ©Google, The GeoInformation Group

地表から鳥瞰へ、そして衛星軌道から銀河へ

FlashコンテンツをWebブラウザで見ることができるGoogle Earthが地球を地表から衛星軌道上までの空間を網羅したものであるなら、「4D2U Mitaka」はさらに地表から(観測可能な限界までの)全宇宙を網羅した距離と時間を把握することができるツールだ。

5──銀河系(4D2U Mitaka)

5──銀河系(4D2U Mitaka)

「Mitaka」の凄さはその説得力にある。「Mitaka」が描いているのはSFの世界でもなく、マンガ家が想像した宇宙でもない。国立天文台を中心とした天文学者たちによる最新の観測結果と理論シミュレ ーションをもとに、現在知りうる最高の形で宇宙を再現したのが「Mitaka」なのである。現代の『Powers of Ten』★二ともいえる「Mitaka」で、数万光年、数億光年と宇宙の彼方まで旅立ち、そしてまた一気に地球に戻ってきてみて欲しい。そこで感じることのできる空間の巨大さに圧倒されるはずだ。
ほとんどの人は一度も宇宙へ行ったことがないはずなのに、「Mitaka」の映像にはなぜか懐かしさを感じる。人の遺伝子に組み込まれている太古の記憶がそうさせるのであろうか。脳のどこかの部分に渡り鳥のような位置を把握する能力が残っているのであろうか。
●4D2U Mitaka〈http://4d2u.nao.ac.jp/html/program/mitaka/〉Windows版が無料ダウンロードできる
●4D2U Navigator〈http://4d2u.nao.ac.jp/top.html〉

6──銀河の大規模構造(137億光年)

6──銀河の大規模構造(137億光年)

7──銀河系(4D2U Navigator)

7──銀河系(4D2U Navigator)

©国立天文台4次元デジタル宇宙プロジェクト

Google Map / Earthの先にあるもの

Google Map / Earthの有益さは、mashupの面白さにある。mashupとは様々な情報源の組み合わせによる新たな価値の創出である。位置情報と何かを組み合わせることによって得られる新たな価値、新たな発見がある。
固有の情報、例えばGPS搭載携帯電話で撮影した写真画像が持つ位置情報。普段意識していないが、あらゆるデータは「位置」「在処」という固有情報を元来持っている。位置情報によってインターネットの仮想世界と、現実世界が密に結びつけられるのだ。最近Google MapとGoogleが公開するインターフェイスを活用して様々な組み合わせのサービスが立ち上がってきている。地図を元にした新たなサービスの構築が容易にスピード感を持って展開することができるようになった。その可能性は無限だ。
Google Map、Google Earthそして「Mitaka」を眺めながら、今居る位置情報に新たな価値を見出すことができる。そして目の前のコンピュータの中に広がる宇宙と地球を見ながら、自身の視線が拡張されていることを実感して欲しい。


★一──Google Earthは元々コンピュータ・グラフィックス・ワークステーションで知られている、Silicon Graphics社のスピンアウト組であるKeyholeの製品であった。
Keyholeは二〇〇四年一〇月にGoogleに買収された。Keyholeの製品では3Dゲーム描画エンジンであるIntrinsic Alchemyが活用されている。Google Earthの心地よい動きの陰にはゲーム開発で培われたノウハウが役立てられているのだ。
★二──Powers of Ten〈http://www.powersof10.com/〉
一九七七年に椅子のデザインでよく知られているイームズ夫妻がIBMの依頼で制作した映像。
大掛かりなクレーンを使い、映画用フィルムで膨大な手間をかけて撮影したもの。人間の細胞(一〇のマイナス一八乗)から宇宙の果て(一〇の二五乗)までを旅するもの。
巨大から極小までのスケーラビリティを示唆する映像としてその後の空間映像の礎となっている。

>安藤幸央(アンドウ・ユキオ)

1970年生
株式会社エクサ ユビキタス ソリューション部。プログラマー。3次元CG、リアルタイムCGやネットワークを利用した各種研究開発業務に携わる。

>『10+1』 No.42

特集=グラウンディング──地図を描く身体